本の帯に「国際結婚、障害児の誕生・・・闘い続ける女の本音」とあるのを見かけて、なんとなく手に取った一冊だった。私も障害児を育てる母親であるので、こういう説明文には自然と引き寄せられてしまう。芥川賞作家の書く「障害児の母」は、どんなふうだろうと、なかば興味本位に読み始めたのだが、あっという間に物語の修羅場つぐ修羅場にひきずりこまれ、作者の分身らしい主人公道子の気性の強さや、修羅場に飲み込まれて沈没しない絶妙のバランス感覚に魅せられていき、気になる部分を何度も読み返し、ふと気づいたら夜が明けていた。
短いが、壮絶な物語である。おそらくは重度の自閉症児と思われる息子のケン。自閉症児に勝るとも劣らない癇癪やこだわり性格を持つ夫のアル。夫婦の間にはどうにもならない異文化間ギャップまであり、摩擦や怒鳴りあいは日常茶飯事である。
自由に生きようとして日本を離れ、アメリカにきた道子が、思春期に入った自閉症の息子に髪をむしられ頭皮まで引き抜かれそうになり、理不尽な夫が絶えず投げてよこす癇癪の受け皿になり、嫁ぎ先のユダヤ文化に個の尊厳まで圧迫され苦しみながら、決して自分を見失わず、母語である関西弁で、強くやわらかく、そしてどこかおかしみさえ漂わせながら、物語っていく。すごい、というほかは無い。
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過越しの祭 (岩波現代文庫 文芸 55) 文庫 – 2002/8/20
米谷 ふみ子
(著)
男尊女卑の日本を離れ,自由に絵を描きたい-大いなる夢を抱き渡米した道子.ユダヤ人作家と結婚したが,文化の違いから何かとぶつかってばかり.そして生まれた子どもは脳に障害を持ち.….施設から帰宅した子どもをめぐる家族のいざこざを描く「遠来の客」,奴隷解放を祝うユダヤの祭で結束固い夫の一族に翻弄され,自らの解放を密かに決行した「過越しの祭」(芥川賞)の2編を収録.自由を求めたはずの道子の予期せぬ戦いとは.
- 本の長さ190ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2002/8/20
- ISBN-104006020554
- ISBN-13978-4006020552
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2002/8/20)
- 発売日 : 2002/8/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 190ページ
- ISBN-10 : 4006020554
- ISBN-13 : 978-4006020552
- Amazon 売れ筋ランキング: - 515,916位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1930年大阪生まれ。作家・画家。大阪女子大学国文科卒。二科展に三年連続入選し、関西女流美術賞受賞。1960年渡米。作家ジョシュ・グリーンフェル ドと結婚し、二児の母となる。現在、ロサンゼルス郊外のパシフィック・パリセイズ在住。1985年「遠来の客」で文学界新人賞、「過越しの祭」で新潮新人 賞、第94回芥川賞、1998年『ファミリー・ビジネス』(新潮社)で女流文学賞をそれぞれ受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 年寄りはだまっとれ!? (ISBN-13: 978-4000241434 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私自身もユダヤ人の方の家で過ぎ越しの祭りを祝った時に感じたことが書かれていたりして、思わずふっと笑ってしまったり、懐かしくなることもありました。
一人の日本人女性が、自由の国と憧れて行った地で経験した現実を、ユーモアも交えながら書いている本です。
一人の日本人女性が、自由の国と憧れて行った地で経験した現実を、ユーモアも交えながら書いている本です。
2018年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ユダヤ関連の本を続けて読んでいる当評者は、友人からユダヤ系アメリカ人と結婚した日本女性の自伝的小説があり、しかも芥川賞受賞ときいて、さっそくこの本を読みました・・・。はぁ?なんですか、これ。
その一 大阪弁で書くなら小田実氏のように徹底して大阪弁で書けばよいものを、未完成の標準日本語(しかも米国生活のせいかカタカナ語が多くてうんざりーそのカタカナさえ、日本と同じ書き方でなかったり、日本語に入っていない英語だったりで、一瞬何のことなのかわかりませんでした)とゴチャマゼ。もともと画家ということもあって、言語表現があまりお得意でないような。
その二 文学性という点からは、何も感じられません。当時は、このような「手記」に近い小説はものめずらしさも手伝って、ある種の貴重な「文学作品」扱いされたのかもしれませんが、現代ではこの程度の雑文はネットの各種ブログで「ただ」で読めます。芥川賞って、純文学対象ってきいてたけど?
その三 これが自叙伝だとして、作家は自分の教養の低さ、視野の狭さの自覚がない。それなのに、自分がすべてを悟ったかのように全編にわたってエバっています。だから、よけい周辺との人間関係がうまくいかなくなる。大阪のおばちゃんの悪い方のパターン。もちろん障碍児を育てる苦労はありますが、しかし、ここまでひねくれるか?主人公のあまりの幼さに、読者は恥ずかしくなります。
日本の男尊女卑の世界から自由になるために渡米した女性が、なぜ結婚したのか、しかも不勉強なままの国際結婚。で、その相手を「主人」と読んでるのも、なんだか・・・。しかし、それらも全て分かった上で、自分の愚かさをさらすための作品だったのだとしたら、ある意味であっぱれ?かも・・・
その四 作中にでてくる事実関係にいろいろと間違いがあります。ちゃんと調べなかったのね。
その五 読後調べたら、「日本人のユダヤ差別」というテーマのアメリカで出版された学術書に、この小説が典型例として上げられています。その通り、ユダヤ関連の事柄については独断と偏見だらけです。小田実氏のあとがきには、作者が受賞パーティーで「ユダヤ文化に反対なのかと尋ねられ、驚きました」と書いていたそうで、小田氏でさえ、「そんなふうにしか読めないものかと、私もおどろく」と締めくくっておられますが、当評者は、そんなふうに読まれて驚いたことに驚く、と記しておきます。
その六 さらに読後知ったのですが、誰にどうおだてられたのか、作者は自分で同小説を英訳して米国で出版していたのです!米国アマゾンでは、翻訳も稚拙で、内容もひどいと星一つレビュー。
日本がいやでアメリカに出たものの、うまくいかず愚痴ばかりの典型例。問題は、どこに住もうと避けられないもの=自分自身の中にあることが分かってない人が、大阪弁まじりで小説を書いたのが、当時の文壇にウケた、ということでしょうか。
小説としては落胆しましたが、博物館入りの珍品として、我が家のお宝にしようかしら。
その一 大阪弁で書くなら小田実氏のように徹底して大阪弁で書けばよいものを、未完成の標準日本語(しかも米国生活のせいかカタカナ語が多くてうんざりーそのカタカナさえ、日本と同じ書き方でなかったり、日本語に入っていない英語だったりで、一瞬何のことなのかわかりませんでした)とゴチャマゼ。もともと画家ということもあって、言語表現があまりお得意でないような。
その二 文学性という点からは、何も感じられません。当時は、このような「手記」に近い小説はものめずらしさも手伝って、ある種の貴重な「文学作品」扱いされたのかもしれませんが、現代ではこの程度の雑文はネットの各種ブログで「ただ」で読めます。芥川賞って、純文学対象ってきいてたけど?
その三 これが自叙伝だとして、作家は自分の教養の低さ、視野の狭さの自覚がない。それなのに、自分がすべてを悟ったかのように全編にわたってエバっています。だから、よけい周辺との人間関係がうまくいかなくなる。大阪のおばちゃんの悪い方のパターン。もちろん障碍児を育てる苦労はありますが、しかし、ここまでひねくれるか?主人公のあまりの幼さに、読者は恥ずかしくなります。
日本の男尊女卑の世界から自由になるために渡米した女性が、なぜ結婚したのか、しかも不勉強なままの国際結婚。で、その相手を「主人」と読んでるのも、なんだか・・・。しかし、それらも全て分かった上で、自分の愚かさをさらすための作品だったのだとしたら、ある意味であっぱれ?かも・・・
その四 作中にでてくる事実関係にいろいろと間違いがあります。ちゃんと調べなかったのね。
その五 読後調べたら、「日本人のユダヤ差別」というテーマのアメリカで出版された学術書に、この小説が典型例として上げられています。その通り、ユダヤ関連の事柄については独断と偏見だらけです。小田実氏のあとがきには、作者が受賞パーティーで「ユダヤ文化に反対なのかと尋ねられ、驚きました」と書いていたそうで、小田氏でさえ、「そんなふうにしか読めないものかと、私もおどろく」と締めくくっておられますが、当評者は、そんなふうに読まれて驚いたことに驚く、と記しておきます。
その六 さらに読後知ったのですが、誰にどうおだてられたのか、作者は自分で同小説を英訳して米国で出版していたのです!米国アマゾンでは、翻訳も稚拙で、内容もひどいと星一つレビュー。
日本がいやでアメリカに出たものの、うまくいかず愚痴ばかりの典型例。問題は、どこに住もうと避けられないもの=自分自身の中にあることが分かってない人が、大阪弁まじりで小説を書いたのが、当時の文壇にウケた、ということでしょうか。
小説としては落胆しましたが、博物館入りの珍品として、我が家のお宝にしようかしら。
2023年3月10日に日本でレビュー済み
ユダヤ系アメリカ人と国際結婚をし、米国で暮らす日本人主婦の日常を切り取った二作品からなる作品集。著者の実体験に基づくのだろうか。
女性の自立を望み渡米したものの、二人の10代の息子のうち弟は、脳の障がいのため介助が必要であり、旦那は瞬間的に怒りを爆発させる癇癪持ちで理想からは程遠い生活だ。
「遠来の客」は、身体が大きくなって手に余るよる息子を遠い施設に預ける家族の道中と、その後が描かれている。一抹の寂しさを感じる主人公ら。出口の見えない辛さはあるものの、負けん気の強い主人公の関西弁が、深刻さを和らげる。理不尽に沸騰した旦那との言い争いは快活さすら感じる。
「過越しの祭」は、そんな一家の家族旅行の一コマ。13年振りに訪れたニューヨークで自由を満喫するはずが、夫の親戚筋の儀式に参加するハメに陥った主人公。散々に意地悪をされ、こんなはずではなかった渡米からの日々を振り返える。読み進めながら、主人公と共にムカっ腹が立つこと必定だろう。ラストは、痛快さすら感じる。
【芥川賞】
女性の自立を望み渡米したものの、二人の10代の息子のうち弟は、脳の障がいのため介助が必要であり、旦那は瞬間的に怒りを爆発させる癇癪持ちで理想からは程遠い生活だ。
「遠来の客」は、身体が大きくなって手に余るよる息子を遠い施設に預ける家族の道中と、その後が描かれている。一抹の寂しさを感じる主人公ら。出口の見えない辛さはあるものの、負けん気の強い主人公の関西弁が、深刻さを和らげる。理不尽に沸騰した旦那との言い争いは快活さすら感じる。
「過越しの祭」は、そんな一家の家族旅行の一コマ。13年振りに訪れたニューヨークで自由を満喫するはずが、夫の親戚筋の儀式に参加するハメに陥った主人公。散々に意地悪をされ、こんなはずではなかった渡米からの日々を振り返える。読み進めながら、主人公と共にムカっ腹が立つこと必定だろう。ラストは、痛快さすら感じる。
【芥川賞】
2002年10月26日に日本でレビュー済み
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2004年6月10日に日本でレビュー済み
小説というより、主婦のオバサンの愚痴日記です。
作者が、そこら辺の普通の主婦よりは文章力があり、観察眼もあり、語彙も豊富であること。そして夫がユダヤ人で文化的宗教的価値観が全く違う上に、次男には脳障害があるということで、フツーの主婦よりは遥かに苦労を経験していること。
そういったポイントが重なり、『過越しの祭』という作品は、恐らくこれが主婦のグチ日記としては最高峰の一形態といえるでしょう。確かに凄まじい世界です。
主婦のオバサンが読めば、ある所では共感できたりある所では反発したりと、読み応えがあるかも?
作者が、そこら辺の普通の主婦よりは文章力があり、観察眼もあり、語彙も豊富であること。そして夫がユダヤ人で文化的宗教的価値観が全く違う上に、次男には脳障害があるということで、フツーの主婦よりは遥かに苦労を経験していること。
そういったポイントが重なり、『過越しの祭』という作品は、恐らくこれが主婦のグチ日記としては最高峰の一形態といえるでしょう。確かに凄まじい世界です。
主婦のオバサンが読めば、ある所では共感できたりある所では反発したりと、読み応えがあるかも?